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司さんと僕〜悪夢のテスト編〜 


『おいアズアズ!テストどんな感じだった!?』
『勉強してない〜なんて言って裏切ってるんだろアズアズ?見せろよこの〜〜♪』
『さてさて!天才アズアズの成績は〜……』
『『『…………』』』
『『『……ごめん、アズアズ……』』』

(その反応逆に傷つく!あと“アズアズ”って呼ぶのやめて!)

友達の反応はともかく、パパやママ……じゃない、お父さんやお母さんに
なんて言おうかと思うほど、今回のテストは散々だったので気が重い。
でも……そんな事は司さんの家に来てしまえばどうでもよくなる!!

今日も僕は司さんの家に遊びに来たよ!
家に帰る時間が惜しいから学校から直で!司さんの家に置き着替えもあるし大丈夫!
(最近はいっぱいお泊りもするしデートもするし、僕ら超ラブラブって感じ……!!)
そんな事を考えていると自然に頬が緩んでしまう。
着替えて、お茶を飲みながら何気ないおしゃべりも本当に楽しい!
その何気ないおしゃべりの最中、司さんが言った。
「……梓ってさ……家庭教師の先生に来てもらってる?」
「えっ!?」
いきなりの話題で驚いた。
たしかに前まで正行先生っていう先生に家庭教師に来てもらってたけど……
正行先生は転職しちゃって今は誰にも来てもらってない。
どうしてこんな事聞かれたんだろう?
不思議に思いながらも僕はありのままを答えた。
「前まで、来てもらってたんですけど……その先生、辞めちゃって。
今は誰にも来てもらってないです……」
「そ、そうなんだ!その、前の先生、高本正行って……先生だよな?」
「すごい!どうして知ってるんですか!?」
「……大学時代の後輩なんだ……」
妙にそわそわする司さんどうしたんだろう……って言うより!!
何この新情報!?聞いてない!!
「どうしてそれを早く教えてくれないんですか!?」
「えっ!?」
「知ってたら司さんの大学時代の事とかアレコレ聞きたかったのに!もう正行先生!!
正行先生が大学の話をしてくれてたら!!司さんの名前をぽろっとでも出してくれたらぁぁ!」
「あはは、梓……」
僕が本気で悔しがってるのに司さんは笑ってる。
もう!他人事だと思って!でも困ったみたいに笑った顔も素敵!!
でも、その後またじれったそうに僕に聞いて来た。
「……正行、教えるの上手だった?」
「え!?っと……そうですね、普通に分かりやすかったです。ちょっと頼りなさそうだけど、優しかったし」
「そっか。確かに正行、優しいから」
「司さん?」
何か、どうとは言い辛いけど、司さんの様子がおかしい。
呼びかけてみると、少しそっぽを向いて言う。
「……俺も……結構、勉強得意なんだけどな……」
「それは分かりますよぉ!司さんクールだしカッコいいし!」
「……梓の分からない所、教えたりとか……できると思うけど……」
「…………」
あれ?心なしか司さんの顔が赤い?
も、もしかして司さん……
「正行先生に妬いてます??」
「〜〜〜〜ッ!!ごめん忘れて!!俺超大人げない!カッコ悪い!!」
恥ずかしそうにそう叫んで机に突っ伏す司さん……
可愛いィィィィイイイッ!!
わぁあああそんな!僕の事で嫉妬してくれるなんて!梓感激です!!
僕は大急ぎで司さんの傍に行って彼を助け起こした。
「そんな事無いです!司さんは!宇宙一カッコいいイケメンですよ!!」
「あ、梓……」
「本当は僕だって、司さんと勉強したかったけど……
そうすると、ドキドキして勉強にならないと思ったから、頼めなかったんです。
……司さんの事、大好きだから。け、結構……態度に出てる自覚ありますけど……
分かってくださいますよね?」
我ながら、恥ずかしい事言っちゃって頬が熱くなる。
司さんも感激したような顔で、何か言われる前に誤魔化す様に大声を上げた。
「でも!そんなに言うなら司さんと“家庭教師”、やってみようかなぁ!!」
「!ま、任……」
「先生は……僕の方ですけどね?」
「あっ……
司さんの表情が一気に不安げで色っぽい表情になる。
あぁ…… こんな司さんも最高!もう期待しちゃってるのかなぁ 僕もだけど
僕は一刻も早く司さんと“家庭教師プレイ”がしたくて、雑に学校のカバンをひっくり返した。
「えっと!司さんの苦手な教科ってありますか!?今日の時間割に入ってたらいいけど!」
バサバサッ!ドサドサッ!
机の上に雪崩落ちて広がる教科書やノート、そして……
「あっ!!」
テストの答案。し、しまった!こんな悪い点数恥ずかしいよ!!
「ご、ごめんなさい!これは違うんです!!」
慌てて悪いテストの答案を隠そうとしたけれど……
「待って、えっ、梓見せて!!」
司さんが真剣にテストの答案を拾い上げる。それも、器用に何枚も。
わぁああ親に見せられなくてカバンに入れっぱなしだったことが悪手にぃぃぃっ!!
そんな真剣な顔でマジマジと見ないでぇぇっ!
「梓……いつもこんな点数なのか……?」
「ちっ、違いますぅ!!今回はたまたま調子悪くて!!いつもはもっと取れます!!」
「体調、悪かった?」
「そ、そういうわけではないですけど……なんというか、その……」
流石にハッキリ“勉強してなかったんです!”とは言えない。
何だか、司さんが結構真剣に心配してて気まずいし……
そう、司さんのガチ心配フェイスがカッコいいけどいたたまれない……!!
そうやって黙ってたら、司さんの方が話し始める。
「……最近、たくさん泊まったり遊んだりしたよな?でも、もしかして……テスト前だった?」
「いや、あの、それ抜き打ちテストだったからいきなりで……!」
「“中間テスト”って書いてある!!何で言ってくれなかったんだよ!?
ごめん……知らずに俺、梓の事連れ回して勉強する時間奪って……!」
「ち、違います!司さんの所為じゃないんです!僕が、ちゃんと言わなかったから!!」
「……言い出しづらかったか?誘うの強引、だったかな?」
何だか変な話になってきた!全然そんな必要無いのに、申し訳なさそうな司さんを
これ以上悲しませたくなくて、僕は必死に本音をぶちまける。
「そんな事無いです!!僕が!あえて言わなかったんです!
言ったらお誘いを控えられちゃうと思ったから!勉強なんてしたくないし!司さんといつも会いたいし
ずっと遊んでたかったんです!僕が好きで勉強しなかったんです!司さん、そんなに気にしないで下さい!」
「……そっか」
「えっ……」
すごくさっぱりした司さんの返事。
何だか拍子抜けしたけど、これで司さんが気にしないならそれでいいんだ。
いいん、だけど……っ!!
「司さんっ……!!?」
な、何で僕は司さんに抱き上げられてるんだろう!?
もう司さんったら大胆〜っ、って違う!これ何か違う気がする……!!
だめ、ダメ……ほらもう違うぅぅぅぅぅう!!
何で僕司さんの膝の上に乗ってるのぉおおおおおっ!?
「司さん!!先生役は僕ですぅぅっ!!」
何だこのセリフぅぅぅぅぅう!!
人間、パニックを起こすと何を言っていいか分からなくなる。
でも、見慣れたベッドに座った司さんの膝の上に乗ってるんだもん。
下の服脱がされて、お尻丸出しにされちゃったんだもん。パニックを起こさせてほしい。
ちなみに、司さんの返答はこうだった。
「もう遊んでる場合じゃないよな梓?」
バシィッ!!
「ひぃっ!!」
しかもお尻に平手付き。
僕は痛いし怖いし、情けない声しか出なかった。
「やめてください……!やめてください……!!」
「梓がちゃんと反省するまでやめない!」
バシッ!ビシッ!
「うぁあっ!やっ、痛いぃ……!」
やっぱり痛い。もう泣きそう。
これが気持ちいいって、司さん、どれだけ……どれだけ選ばれし人間なの!!
そんな事を考えてたら、司さんの声が聞こえる。
「梓はテストがあるの分かってて勉強サボってたんだもんな?悪い子だよな?」
「悪い子ですぅぅ……!!でも叩かないでぇぇっ……!!」
「それは都合が良すぎる」
バシッ!ビシッ!バシィッ!!
「うぁああん!いい子になりますから!
次からサボらず勉強します!だからもう、許してください!」
確かに都合が良すぎる!
だから、僕は誠心誠意反省の意を述べて謝った。
けど……
「まだまだ。だって梓、“抜き打ちテスト”だ、なんて嘘つこうとしたし」
「あ……!」
「嘘をつくのは悪い子だって、俺の先生も言ってたなぁ」
「うぅうう!もう叩かれるの嫌ですぅぅ!!」
また叩かれるのかと思って、足を動かしてみたけど当然何の効果も無い。
「こーら梓!逃げる事ばっかり考えて!」
バシッ!ビシッ!ビシィッ!!
「だって痛いんですよぉぉ!わぁあああん!」
どころか、逆効果だった。もっとお尻を叩かれてしまう。
でも本当に痛いし、一刻も早く終わって欲しい!
うぅ、普段優しい司さんが、こんなにも厳しくお仕置きしてくるなんて……!
でも、僕が半泣きになっていると手を止めてくれた。
「……じゃあ、痛くないようにして少し聞いてもらおうかな」
「ぐすっ……」
司さんは僕の頭を撫でながら優しく話してくれる。
「梓が俺と会いたいって言ってくれる事も、ずっと遊びたいって思ってくれてる事も、
すごく嬉しい。俺だって梓の事大好きだし、一緒にいて楽しいから同じ気持ちだよ?
でも、それで勉強をないがしろにしたらダメだ。梓にとっては大事な事なんだから」
「は、はい……」
「それに、遊び回ってて成績落としたら親御さんも心配するだろうし。
俺の事、悪い男だと思って会わせてもらえなくなるかもよ?」
「それは絶対嫌です!」
「俺も絶対嫌だ。これからは、ちゃんと勉強するか?
俺も協力するから。会えない時だって、俺は梓を想ってるよ。
大事な梓が、俺のせいで身持ちを崩すなんて、悲しい」
「司さん……!!」
司さんがこんなにも僕の為を思って……!!
それに引き替え、司さんとの時間に浮かれて、勉強をサボった自分が恥ずかしくなった。
僕はいつも自分の気持ちいい事ばかりを優先してしまって……!!
「ごめんなさい司さん!これからは真面目に勉強します!
司さんを成績が落ちた理由になんてさせない……!
う、嘘ついたり、心配させてごめんなさい……!」
「お、ちゃんと反省したっぽいな。ごめんなさいも言えたし。いい子だ」
「うぅ、ごめんなさい……!」
そっか、今まで痛がるばっかりで“ごめんなさい”も言えてなかったんだ。
こんな僕に司さんは“いい子”だって……司さん……!!
「じゃあ、反省も済んだし、ここからは痛がり放題だな!」
僕の感激は司さんの声で吹き飛ばされる。
「え゛っ!?」
「お仕置きなんだから。悪い事した分は痛い目にも遭ってもらわないと。
えーっと、ざっと見た感じさっきのテストの平均点は20くらいだったから……」
「っ……!!」
やっぱり痛いのは嫌だけど、あと20回くらいならギリギリ……と、身構えた僕。
けど――
「梓のサボった80点分って事でことで、80回かな」
「!!?」
とんでもない数字を導き出した司さんに、僕は即刻抗議する。
「ままま待ってください!その計算はおかしいです!
僕が常に100点取ってるみたいになってるじゃないですか!!」
「違うのか?梓、頭良さそうだし……」
「それ完全に眼鏡で判断してるでしょ!?
眼鏡かけた人が全員頭いいとは限らないんですよ!?」
自分で言ってて悲しいけど!
眼鏡で頭が良くなるなら僕は3個くらいかけたいし、雪は5個ぐらいかけてる!
とにかく僕の必死の訴えを……!!
「でも梓、今日だけ我慢。悪い子だったろ?我慢できますか?」
「できません!!」
「……俺、これでも怒ってるんだからな?」
「はっ……!?は……!!」
「我慢しますか?」
「はっ……はいぃぃぃっ!ごめんなさいぃぃ!!」
僕が泣きながら折れた。
だってしょうがないじゃないか!司さんを怒らせるなんて!怒らせたままなんて!
そんな大それたこと出来ない!早く怒りを鎮めて欲しい!!
「いい子。じゃあさっそく」
「う、うっ……!!」
バシッ!バシィッ!ビシィッ!!
「うわぁああああん!ごめんなさい!ごめんなさぁぁい!」
ビシッ!バシィッ!バシッ!
「痛い!痛い痛い痛いぃぃぃっ!ごめんなさい反省しましたぁぁッ!!」
嵐みたいに叩かれて、梓はすごい叫んだし、
「うわぁあああん!やめてやだぁぁああっ!!ごめんなさぁぁい!」
すごい泣きました。
何だかとても恥ずかしい気がするけど、
結局、司さんは80回も叩かなかったんじゃないかな。思ったより短かった気がする。
やっぱり優しい……!お仕置きは割と容赦なかったけど!
「よし、梓ちゃんと我慢できたな。もう終わりだから」
「うぁああああん!ごめんなさい!うわぁああん!」
「うん、もう怒ってないよ」
こんな風に優しく司さんに抱きしめてもらったので、痛い思いはしたけど嬉しかったです。

……いや!やっぱり痛いのは要らない!
司さんのお仕置きがすっごく厳しい事を思い知った僕なので、
勉強だけはきちんとしようと誓ったのでした。
お仕置きの方も、司さんに負けないように頑張るぞ!!



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