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教会組で不思議の国のアリス風
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々あるところに、アリスという心優しい男の子がおりました。
長いプラチナブロンドの髪をした、少女のように美しい彼は
白いエプロンドレスを着て、外の木の下で姉と一緒に聖典を呼んでいるのですが……
「ハァハァ、真面目に読書だなんてアリスはいい子だね……
でも、そろそろ一緒にお昼寝(意味深)しない?」
キモメンな姉が変態顔を逸らしながらそう言っている時、
アリスは黒いウサ耳の生えた銀髪の少年が走っていくのを見ました。
「急がないと!急がないと殺される……!!」
そんな物騒な単語が聞こえて、アリスは心配になってその黒ウサギを追います。
「ど、どうかなアリス??なんなら一緒にお風呂に入ってから……あ、あれ?アリス?アリス?!」
当然、姉の目の前からアリスはいなくなって、姉は必死に探します。


一方、アリスは黒ウサギ少年を追いかけていて、その時に黒ウサギが転んでします。
「ぎゃ!?いてて……!!」
「大丈夫ですか!!?」
心配そうに駆け寄るアリス。黒ウサギはアリスを見て一気に顔を赤らめます。
「(て……天使!!?)い、いや……!俺は大丈夫!!それより早く行かないと……!」
「待って、手当てしないと……!どうしてそんなに急いでいるんですか?」
「それは……」
黒ウサギは言いにくそうに口を閉じます。
アリスは彼の足に絆創膏を貼ってあげながら尋ねます。
「さっき、“殺される”、なんて聞こえました。良ければ話を聞かせて下さいませんか?」
「……無垢なお嬢さんに聞かせるような話ではないのですが、俺の主人は恐ろしい女王なんです。
手下どもを働かせるだけ働かせて、無残な殺し方をする……!」
「なんて酷い……!そんな女王様を野放しにしておけません!!
ぜひ、説得しに行かせてください!」
アリスの申し出を聞いて、黒ウサギは慌てて首を振ります。
「それは危険です!女王は言葉巧みに、殺したい相手の“生きる苦しみ”を引きずり出して、
絶望を誘惑して狂わせ、自殺に追い込んでしまう!俺は死にたいなんて思った事は一度も無いけれど、
女王に“処刑”されたらきっと……!貴方も女王を怒らせない方がいい!
白くて美しい貴方がバラ園を赤く染めるのは見たくない!!」
「いいえ!神様は世界の平和と人々の幸せをお望みです!
もうこれ以上、悲しんで自らの命を絶つ者がいなくなるように……女王様だって、そんな事ばかりしていては苦しいはずです!
僕は女王様の事も罪から救いたい……!!」
必死に優しい言葉を紡ぐアリスの背に、白い羽が見えた気がする黒ウサギ。
だいぶ気が引けましたが、アリスを自分たちの国へ……女王様の元へ連れていく事にしました。


〜IN 不思議の国〜
そして不思議の国に着き、アリスと黒ウサギが女王の元へ行こうとすると……
途中にエレガントなお茶会のテーブルを通りかかりました。
「やぁ“白”ウサギ!そして見知らぬお嬢さん!
ちょうど今からお茶の時間なんだ!ご一緒しないかい?」
シルクハットを被った眼鏡で赤毛の少年が、ニコニコと二人の前に現れます。
黒ウサギはアリスを庇うように後ろに隠しながら言いました。
「悪いな。今日は女王の所にいくから、やめとく」
「女王?彼の所へ行ってどうするつもり?君達も処刑されるの?ねぇ兄さん達?」
そう言って彼が目をやった方向には、テーブル。
その上に、串に貫かれて二体いっしょくたになった男の子の人形が座っていました。
フォークやナイフが刺さりまくって見るも無残ですが、それを見た瞬間に帽子少年が急に真顔になります。
「あ。違う。こんな奴ら兄さんじゃないや……嘘つき、嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき下衆野郎ども……!!」
呪詛のようにブツブツ言いながら、刺さっているフォークを抜いて人形をめった刺しにします。
黒ウサギはアリスにそっと耳打ちしました。
「アイツはああやって、毎日人形を抉ったり、そうかと思ったら
人形相手に楽しくお茶会したりしてる頭のイカレた奴なんだ。
放っておいて先を急ごう」
「…………」
そう言われたものの、アリスは心配そうに帽子少年を見やります。
本人はまたコロッと楽しそうにしていました。
「やっぱり女王の所へ行くなんて危険だよ!一緒にここでお茶会にしよう!
兄さん達もぜひそうして欲しいって!
苦しみに悲しみに恐れに痛みに絶望に!近づく必要なんて無い!
楽しくお茶会をしていれば全部全〜〜部、忘れられる!そうだろう??」
「……貴方は、苦しいのですか?」
「アリス!!まともに話しちゃダメだって!」
黒ウサギは止めますが、アリスは臆せず帽子少年に話しかけます。
「僕は貴方が心から楽しんでこのお茶会をしているとは思えない!
苦しみから逃れるためだけの暇つぶしを永遠に続けるなんて虚しすぎます!
貴方は貴方のしたい事をすべきだ!」
「…………僕のしたい事?」
「そうです!苦しみがあるなら、どうか話してください。
一人で苦しみを抱えるほど辛い事はありません。僕は、貴方の力になりたい……」
アリスが帽子少年の手を握ると、帽子少年は困惑したように微笑みました。
「初めてだよ。僕の話をまともに聞こうとしてくれるなんて……。
……上手く、話せなくてもいい?」
「もちろんです。貴方の心をそのまま聞きたい」
「僕は……」
話し始めると同時に、帽子少年は涙を流しました。
そして苦しげに言葉をぶちました。
「別に良かったんだ……!兄さん達が立派な学者になれるなら、それでいいと思った!
頭の良い兄さん達の事誇りに思ってたし、父さんの夢も叶えてあげたかったし、家の名誉も回復する!
兄さん達は泣いて謝ってくれて、行く先の僕の幸せを願ってくれてる感じがしたから……」
アリスも悲しそうな表情で黙って話を聞いていました。
帽子少年は泣きながらも憎しみで顔を歪めて続きを紡ぎます。
「でも、僕の幸せなんか誰も何とも思ってなかった……!
偶然目が覚めて、聞こえてきて、びっくりして……!聞いてた話と全然違くて……っ!!
何より!兄さん達の最低な会話が信じられなかった!
……気付いたら飛び降りてたよ。落ち方が悪くて死んでも、道中獣に食い殺されてもいいと思ったんだ。
最悪の家族に最悪の一生を押し付けられるくらいなら!!
特に兄さん達が憎かった!騙された!一生絶対許さない!って思った……」
そこまで言った帽子少年は一層苦そうにして、
それでもまだ胸の内を話し続けました。
「それなのに……っ、全部、悪い夢だったのかもって、時々……!
不安になって幻聴を聞いたとか!暗かったし!雨だったし!
だったら僕悪い事を……本当の兄さん達は僕を心配して今も探してくれてるかなって……
ありもしない希望が消えない!捨てられないんだ!
……すごく、惨めなんだ。僕……」
「……いいえ」
話を終えたらしき帽子少年に、アリスが優しく首を振ります。
彼の震える手を強く握って、温かい笑顔で言葉をかけました。
「大切な兄弟を信じたい気持ち……良く分かります。
それに、帽子さんの希望は案外当たっているかもしれません。
兄というのは、弟の幸せを願っているものです。
自分の幸せと天秤にかけて、人知れず悩んでるものです……」
「……そうだと、いいな」
やっと、安心したように帽子少年は笑いました。
そして深く呼吸をして言いました。
「僕、兄さん達に手紙を書いてみるよ。
どうにか、届ける方法も探して……返事が、来なかったり……
酷い返事を返されるかもしれないけど。
その時は、また傍に来て話を聞いてくれる?」
「もちろん!その時こそ、お茶会をしましょう!」
アリスが明るく言うと、帽子少年もにっこりと笑います。
「僕、本当は本を読むのが大好きなんだ。これからはお茶を飲みながら読書をして暮らすよ。
アリス、どうもありがとう」
そんな言葉をもらって、アリスと黒ウサギは帽子少年と別れました。


先へと進みながら、黒ウサギはアリスにひたすら感心しています。
「お茶会帽子が案外まともな奴だったなんて。あんな苦しみを持っていただなんて。
今まで誰も分からなかった。アリスはすごい力を持ってるよ!」
「ありがとう黒ウサギさん。そう言ってもらえると、女王様も救う自信が湧いてくるよ!」
アリスの笑顔に、黒ウサギは赤くなって慌てて顔を逸らしてしまいました。
そんな黒ウサギに、アリスは不思議そうな顔をしているのでした。


〜IN 女王の城〜

アリスと黒ウサギが女王様がいるという城へやってきました。
城の中の立派なバラ園を歩いていると――
『女王様バンザァアアアアイ!!!』
急に大声が聞こえてきて、黒ウサギが身構えます。
「!!ッあ、アリス!!見ちゃダメだ!!」
「!!?」
そして遥か上空から兵士らしき身なりの男性が落下してきます。
黒ウサギは慌ててアリスの目を塞ごうとしますが、アリスはとっさに叫びます。
「危ない!!!」
そうすると、地面に激突するはずだった兵士はゆっくりと地面に横たわります。
「だ、大丈夫ですか!!?」
「おい!しっかりしろ!!女王にやられたのか!?」
『……ひ、酷いです……どうして死なせてくれないんですか!?』
トランプっぽい軍服を着た兵士は虚ろな目で笑いながら、涙を流して言います。
『せ、せっかく、女王様が僕の事を分かってくれたのに!
頑張っても何も上手くいかない!皆みたいに普通に上手にできない!
ずっと苦しかった!誰にも言えなかった!
でも女王様は初めて僕の事哀れんでくれて!受けとめてくれて!
楽にしてくれたのに!あぁ!もう苦しまなくて済むと思ったのに!!僕はダメな家来なんだ!無能なんだ!
友達も彼女もいない!!仕事もできない!きっと結婚もできない!夢だって叶わない!!
この先生きててもいい事なんか一つも無い!もう終わりなんだぁぁぁっ!!』
「落ち着いてください!!そんな風に自分を決めつけないで!!」
アリスは必死にトランプ兵を揺さぶります。
そして、手を握りながら彼の心に呼びかけます。
「貴方は何も終わってなんかいません!!
貴方は死ぬ事を望んでるんじゃない!ただ、幸せになりたいだけなんです!
まだ諦めないで!絶対にもう一度やっていけます!
僕が道を照らします!!灯りを、掲げます!!」
『!!うぅうう……!!女王様……!!』
「……一緒に女王様の所へ行きましょう。貴方は女王様をまだ慕ってるんですよね?」
泣いて頷くトランプ兵と一緒に、アリスと黒ウサギは女王の元へ行きました。


女王は城の一番高い塔の上にいました。
怯えるトランプ兵たちが見据える玉座に座るのは、
独特な色香を纏った服を着た、妖艶ながらも幼い少年で、アリスは驚きます。
彼はアリスや黒ウサギには目もくれず、助けたトランプ兵を見て心底憐れみを込めて言います。
「……死にきれなかったの?可哀想に……大丈夫、キミは悪くないんだよ」
女王の優しい口調に、さっきのトランプ兵はビクリと体を震わせ、
さらに優しい笑顔で手を差し伸べて、女王は続けます。
「怖かったんだね……分かるよ。誰だって死ぬのは怖いもの。
でもね、一瞬だ。すぐ楽になれる。もう永遠に、キミは辛い思いをしなくていいんだ。
おいで。もう無理して頑張らなくていいんだよ。僕が助けてあげる。君を、救ってあげるから……」
「あ……ア゛ァ……女王様ァァァ……!!」
ガクガクと体を震わせるトランプ兵は、虚ろな瞳で女王へと近づこうとしますが、
アリスが手を取って止めます。そして女王へと叫びます。
「もうやめてください女王様!
無理やり死ぬ事が救いであるはずがない!!
神様はそんな事望まれません!!」
「……誰お前??あぁ、黒ウサギも帰ってたんだ」
ここでうってかわって気怠そうにアリスや黒ウサギに気付いた女王。
アリスへと言い返します。
「アリス。無理やりじゃない。彼は死にたいんだよ。この世界に絶望してるんだ。解放してあげなきゃ。
生きる事は苦しい。この世界は地獄だ。可哀想な彼をこれ以上苦しめないであげて。
ろくに救う事もしないくせに、生前苦しみ抜いた魂を更なる地獄に叩き落とす……
最低最悪なカミサマとやらを僕らに信じろっていうの?冗談じゃない……!
僕らは皆知ってる!!カミサマなんていないんだ!」
女王は自分で何か言えば言うほど怒っていくようでした。
けれど、アリスは負けじと言い返します。
「違う!!神様はいつも見守って下さってるんです!傍にいて下さってるんです!
一人一人が困難を乗り越えていけると、信じて下さってるんです!!
この世界は神様が作った、美しい世界です!天国でも地獄でも無い!!
地獄はどこにあると思いますか!?貴方の心の中です!心を地獄に囚われないで!!」
「っ……!!」
アリスの言葉に口ごもった女王へ、アリスは更に畳み掛けます。熱弁します。
「だから僕は皆で生きていきたい!!苦しんでいる者がいるなら助けたい!
手に手を取って、可能な限り幸せへ!明るい希望へ皆で行きたい!
苦しんだっていいんです!でも自分で死ぬのは違います!
皆で立ち直って、皆で生きていけます!」
女王は耳を塞ぎました。目を閉じて、首を振って叫びます。
「うるさい……うるさいよ!!お前なんかに分からない!
世界を閉ざすほどの、消し去るほどの苦しみ、絶望――ッッ絶対分からない!!
地獄だから!苦しみが消えないから生きていけない!死ぬしか解放される方法は無いんだ!
だからママは死んだんだ!!」
「!!」
女王の涙ながらの叫びに、アリスは言葉が出ませんでした。
泣きそうになりながらも、女王の方へ歩みながら言います。
「……貴方のママは……とても悲しいけど、それを選んだ……。
その運命は、もう僕には……どうする事もできない……!!
けれど、貴方は違います!!ママだって、貴方が自分と同じように苦しんで欲しくないはず!
ましてや死を選んでほしいなんて思ってないはずです!!
幸せになってもらいたいはずです!」
「知った風な事言わないで!僕は、僕っ……一緒に連れて行ってもらえなかった!
ママに何もしてあげられなかった……!!
お前に、何が!何がッ……!!ママ……ママぁ……!!」
「女王様……僕は、ママが貴方に世界への希望を託したような気がするんです。
どこかで世界を諦めてなかったから、愛する貴方を殺してしまう事はできなかった。
だから貴方も、もう家来を殺すのはやめにしましょう」
女王の元へたどり着いたアリスは、彼もまた泣きながら女王に言いました。
「ママの魂が安らかで、幸せであるように一緒に祈り続けましょう。
そして、貴方はこの世界で幸せになるんです。
生きていれば苦しみや困難はあるけれど、大丈夫。
それは誰でも同じ事。神様は誰一人お見捨てになりません。
僕らと、一緒に生きていきましょう。女王様」
泣いているアリスを泣きながら見つめる女王は、アリスに強く抱きしめられる。
そうすると、どこからか遠慮がちなトランプ兵の声が聞こえてきました。
「女王、様……!」
彼の声はつっかえながらも懸命に続けます。
「ぼ、僕……もし、死ぬ以外の道が……願いが、叶うとしたら……女王様の、お役にたちたかった……。
ずっと、優秀なトランプ兵になって、女王様のお役に立ちたかったんです!!
女王様が、大好きです!役立たずでごめんなさい!!
もう一度、頑張ってみてもいいですか……!?」
「お前……!!」
その言葉に驚く女王。
他のトランプ兵達も口々に声を上げました。
「俺も女王様が大好きです!愛してます!!」
「女王様の笑顔の為なら何だってします!薔薇だって全部赤く塗ります!だから血で染めないで!」
「いっそ全部赤いバラに植え替えましょう!!皆で協力して女王様を喜ばせたいんです!!」
「俺達辛い事もあるけどやっぱり死にたくない!女王様と楽しい生活を続けたいです!」
「女王!!俺、女王の事誤解してた!俺もこれからは女王を守るから!
だからこの世界を見損なわないでくれ!!」
最後は黒ウサギも叫んでいました。
「……皆……黒ウサギ……」
女王は驚いたような感激したような顔をしています。
アリスは言いました。
「女王様も、皆の事大好きなんですよね?」
「……うん。だから……助けてあげたかった。ママの事も……。
ママはいつも泣いてて、本当に苦しそうで……でも笑顔は優しかったよ。アリス……」
女王はアリスを見上げながら瞳を潤ませます。
「一緒に泣いてくれて、嬉しかった。
今更こんな気持ちになるなんて……責任とって、僕のママの代わりになってよ……」
「は、はい……!」
アリスは女王の可愛いお願いに、頬を赤らめて頷きます。
そして、何か閃いたように言いました。
「そうだ!思えばこんな小さい子に女王様だなんて心配です!僕がこの国の女王になって治めます!
そしたら、実質女王様のママになれますよね??」
「!?」
アリスの言葉を聞いた女王は心底驚いたように慌てます。
「待って!何でそうなるの!?僕は“ママ役の新しい家来にしてあげる”って……!!」
「きちんと責任を持って努めますので!僕に全部任せてください、女王様!」
「嫌だよ!やめてよ!女王の座は気に入ってるんだから!渡さないからね!?」
女王の頑なな拒否に、アリスはショックを受けたように呆然と言いました。
「酷い……どうしてそんなワガママ言うんですか……?」
どこか狂気めいたその表情に女王がゾッとした次の瞬間、アリスが言います。
「聞き分けのない悪い子はお仕置きですよ、女王様。
ほら、そこには僕が座りますから女王様は僕のおひざの上にきて??」
「いやっ……!!」
怯え気味に玉座に縋り付く女王にアリスが天使の笑顔を向けます。
少し強引にアリスが女王の手を引いて、自分が玉座に座って、
女王を膝の上に乗せてしまうと……
その瞬間、アリスの服が純白の女王の衣装に、女王の服が白ウサギの衣装に変化したのでした。
不思議の国が女王の交代を認めたのです。
「そっ、そんな……不思議の国が僕を裏切った……!!」
「大丈夫だよ女王様。これからは僕の秘書の“白ウサギ”として、
傍でお世話して見守ってあげるからね。とりあえず……お仕置きから始めましょう!」
「や、やめて……!!アリス……!」
露出度は相変わらずな元女王・現白ウサギの、
薄い生地に覆われたお尻を新女王となったアリスが一つ叩きます。
パァンッ!!
「やぁぁっ!!?」
「“アリス”じゃないよ。白ウサギちゃん」
心底優しいその声は、おっとりと言いました。
「“女王様”、だよ?」
パンッ!!
「ひっ――!!」
また一つ、お尻を叩かれて。
この時点で女王……ではなく白ウサギは恐怖のあまり真っ青になって涙が零れました。
そのままボロボロと泣き始めます。
「ひ、酷い!!こんなのって酷い……!!」
「……君だって悪気は無かったかもしれないけど十分酷い事をしてきたよ。
出来る限りの罪は僕が女王の地位と一緒に引き受けたいけど……。
最低限の罰は受けてね」
パンッ!パンッ!パンッ!!
「あっ!いやぁぁっ!痛いよ!やめてぇッ!!」
「反省するなら今ここで、神様に誓いを立てて。白ウサギちゃん。
“これからは心を入れ替えていい子になる”って」
「わっ、分かった!分かったよ!!うっ、あっ!」
パンッ!パンッ!パンッ!!
白ウサギはこれ以上お尻を叩かれてるのが嫌だったので、
痛がりながらも女王アリスの言う通り、“誓い”を口にしました。
「こ、これからは……心を入れ替えて、いい子になる!うぅっ!!
だから!もうっ……お尻叩かないで!アリス……女王様!!」
「うん。ちゃんと言えたね白ウサギちゃん」
パンッ!パンッ!パンッ!!
女王アリスは優しくそう言うものの、手は止めてくれません。
なので、白ウサギは混乱して喚きます。
「あんっ!なっ、何で!?もうやめてよ!言う通りにしたのに!!
アリスの事だって女王様って呼んだよ!?」
「……だって白ウサギちゃん……ただ単に僕の言葉通りに動いてるだけなんだもん。
お尻を叩かれるのがもう嫌なだけでしょう?
心から反省してる感じがしなくて……」
「はぁっ!!?」
涙目の白ウサギはますます混乱して女王アリスに喚き立てました。
「なっ、何それ!?言う事聞けば満足なんじゃないの!?どうしたらいいの!?」
「僕は別に命令を聞いて欲しいわけじゃない。
白ウサギちゃんに本当にいい子になって欲しいんだ。
悔い改めて、心の底から反省して“いい子になる”って思えばいいんだよ」
「そんな……事……僕は、もう……!!」
「白ウサギちゃんならできるよ。手伝ってあげる」
女王アリスは穏やかに言いながらも、白ウサギのお尻を覆う薄布を
真ん中に手繰って挟み込んで、お尻をの双丘を剥き出しにしてしまいました。
ずっと叩かれていたので赤みがかっています。
「や……やめ……て……おね、がい……!」
この状況に恐怖が最高潮に達した白ウサギは、声を震わせながら懇願しますが、
女王アリスは白ウサギの露わになったお尻に手を振り下ろしました。
パンッ!パンッ!パンッ!!
「あぁっ!嫌!!離して!!もう嫌だ!!アリス!!うぁぁっ!!」
「まだ僕に女王の座を無理やり奪われたって思ってる?」
「やだぁぁっ!思ってない!!思って……――」
パァンッ!!
女王アリスに弱い所を厳しく叩かれて、
ついに白ウサギは大声を上げて泣き出してしまいました。
「うぁあああああん!!ごめんなさい!!
僕!あぁあん!僕は、取り返しのつかない事を!!
本当は薄々分かってたけど……!でも皆が!!薔薇が綺麗で!
でも皆の為だと思って!止まらなくなってぇぇっ!!」
パンッ!パンッ!パンッ!!
「ごめんなさい!!ごめんなさい皆!!
僕が皆の苦しみを受け入れるから!だから許して!!
許して!!アァアリスぅぅっ!!うわぁああああん!!」
パンッ!パンッ!パンッ!!
言葉も整わないままに、ひたすら謝って泣き叫ぶ白ウサギ。
その間もお尻を叩かれているのでお尻は真っ赤になってしまいました。
その姿に対して、女王アリスが言います。
「自分が悪い子だったって、反省できた?」
「反省したぁぁっ!これからずっと反省するからぁ!!
あぁああアリス!君が、女王だ!!君がっ、ぅう相応しいんだ!認めるからぁッ!
心から君に譲るからぁぁっ!!あぁああアリス女王様ぁぁぁッ!!」
パンッ!パンッ!パンッ!!
「うぁああああん痛いぃ!!皆も女王様もごめんなさいぃっ!!
女王様は僕のママなんでしょぉぉっ!!?
本当にいい子になるよぉぉ!ママ許してよぉぉっ!!」
(……ママって呼ばれるのもいいかも……)
そんな事を思いながら、アリスは手を止めて、
真っ赤なお尻で泣き叫ぶ白ウサギへ言いました。
「白ウサギちゃん……本当に反省できたみたいだから、もう終わりにしようね」
「うぁあああああん!ママぁぁっ!!」
「いい子いい子。もう痛くしないからね。よしよし。大丈夫だよ」
「うぇえええっ……!!」
女王アリスにお尻を優しく撫でられて、白ウサギの泣き声も徐々に弱まっていくのでした。

その後。
家来皆は新しい女王の誕生を祝福し、黒ウサギも可憐な女王の姿に頬を染めて喜びます。
「アリス……いや、女王様!!おっ、俺も白ウサギと一緒に!女王様を支えるよ!」
「あ!黒ウサギさんには大事なお仕事があるんです!
僕の代わりに“アリス”として元の世界に帰ってもらいたくて!」
「え……」
女王アリスから下された、まさかの退場命令。
女王になる前からアリスが好きで、傍にいたい黒ウサギは慌てて断ろうとしました。
「ま、待ってくれアリス!俺はアリスと一緒に……!!」
「お願い、“アリス”」
「うう……!!」
「ねぇ待って黒ウサギ!一人にしないで!!」
「白ウサギちゃんは一人じゃないよ?僕も皆もついてるよ??」
やっぱり怯え気味の白ウサギに、女王アリスは抱き付いて頭を撫でています。
黒ウサギは、結局女王アリスの命に逆らえず、“アリス”として女王アリスの実家へ帰る事になりました。
不思議の国の(白ウサギ以外)皆が笑顔で送り出してくました。
アリスにされた黒ウサギは「また女王アリスに会いに絶対ここへ来よう!」と心に誓います。


さて、元黒ウサギの新アリス。
頭には赤いリボンで、赤いドレスに黒いエプロンが自分でも似合っているか不安です。
それでも、“アリス=自分”の家に帰ろうと歩いていると……
キモメンの姉が超高速で駆け寄って来ました。
「ンもうアリス!!こんな時間までどこ行ってたの!?心配して探し回っちゃったよぉっ!」
(えっ!?何だこの妖怪!?あっ、俺の姉貴か……!!)
気が付けば辺りは夜になっていて、アリスにも“アリスの記憶”がだんだん染みわたってきます。
でも姉には嫌悪感を感じました。
「早く帰ろう!?ママも心配して、怒ってるよぉ!
もっ、もし……お尻ぺんぺんされちゃったら……
おねいちゃんがお尻に薬塗って、ナデナデしてあげるね
「いや要らねぇよ!触んな!離れて歩けこの妖怪!!」
「酷ぉいアリス!相変わらずツンデレさんなんだからぁ!!」
不思議の力でアリスが入れ替わった事に違和感を抱く者は誰も無く……
家に帰ってからもそれは同じでした。

「アリス!!こんな時間までどこに行ってたんですか!?
暗くなる前に帰りなさいと約束してるでしょう?とても心配したんですよ!?」
「ご、ごめんなさい母さん……」
母親に叱られてしゅんとして謝るアリス。
しかし母親には許してもらえませんでした。
「約束を破って夜遅くまで遊び歩くような子はお仕置きです!
こっちへいらっしゃい!」
「そんな理不尽な……!!」
この展開にアリスは心底絶望しますが、姉は大喜びです。
「ヤッタ――――!!ママぁ!早くやっちゃって!!」
「貴方は向こうへ行ってなさい!」
「えええええ――!!」
そして姉は追い払われてしまいました。
アリスの方は、椅子に座った母親の膝の上でお尻を丸出しにされて叩かれてしまいます。
ピシッ!ピシッ!!ピシッ!
「やぁぁっ!ちっ、違うんだ母さん!!これにはっ、事情があって!」
「言い訳をするんじゃありません!どんな事情があるって言うんです!?」
「そ、それは……!」
アリスは本当の事を言って信じてもらえるか不安でしたが、
このままお尻を叩かれ続けるのも納得できないので一か八か言ってみる事にします。
「じっ、実は!!俺は今までのアリスじゃなくて!
ぅぅっ!そのっ!不思議の国から新しくやってきたアリスで!
今まで不思議の国に住んでたんだよ!不思議の国から来たのがついさっきだったんだ!
だからっ、あぁ!ここへ着くのが今になったのは仕方のない事なんだ!」
「…………」
ピシッ!ピシッ!!ピシッ!
「ひゃぁっ!母さん!悪気があって門限を破ったわけじゃないんだよ!
だ、だから!お尻叩ぶたないで!」
「……アリス……」
黙っていた母親が、どんな反応をするのかドキドキしていたアリスでしたが――
「もう何訳の分からない事言ってるんですか!!
お得意の空想を言い訳に使うなんて!反省しない子は100回叩きますからね!」
ビシッ!バシィッ!!バシッ!!
普通に余計母親を怒らせただけで、しかも今までより厳しくお尻を叩かれてしまいます。
「ほっ、ホントなのにぃぃっ!!あぁあっ!やっぱり嘘ですぅぅっ!!
うぁあああごめんなさぁぁい!!これからは早く帰って来るからぁぁぁッ!!
母さんごめんなさぁぁい!!」
アリスはやっぱりアリスとしてお仕置きされるしかなく、
結局はお尻を真っ赤になるまで叩かれつつ泣きながら謝るのでした。

でもその後はアリスとして母や姉に愛されて幸せに暮らしたそうです。

めでたしめでたし



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【作品番号】kyoukaialice
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