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教会と大神官の来訪
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こは王都から外れた森の奥深くにある小さな教会。
若い神官のオーディーが保護者代わりに、幼い4人の神官、カロム・マチア・ハノエ・クーアと慎ましやかに暮らしている。
最近は変態一名が追加されたけどそれもご愛嬌。
今日も平和で穏やかな一日が始まって……
その、昼過ぎ。
外からマチアと、両手に荷物を持ったカロムが帰って来る。

「オーディー様!!」
「お帰りなさい。おつかい、ありがとうございました」
珍しくはしゃいだ様子のマチアが、オーディーにふわりと抱き付く。
そして、オーディーの言葉も聞こえていない様子で嬉しそうに言った。
「お店の人に聞きました!近々、大神官様の御一行がこの町を通られるそうです!」
「えっ……」
「まさかこんな所までいらっしゃるなんて!大神官様を間近で見られるなんて僕はもう……!!」
興奮気味のマチアとは対照的に、オーディーは表情を曇らせる。
そして、難しい顔をしてマチアの手をそっと握って……
「マチア……貴方、大神官の行列を見に行こうなんて考えてるんですか?」
「えっ……?」
「いけません!きっと人で混雑して危ないですよ?
それに、ああいう賑やかさに乗じて犯罪者だって紛れ込むんです!
その日は町の方へ行かず、ここで大人しくしていなさい!」
軽く叱りつけるようにそう言った。
マチアは驚いた表情のまま呆然とオーディーを見つめて、今度は荷物を置いたカロムがニッコリと口を開く。
「大丈夫だよオーディー様!俺も一緒に行って、マチアちゃんをしっかり守……」
「カロムが一緒に行ったって同じでしょう!?子供だけで行って、危ない事に変わりないんです!!」
カロムの言葉を遮ってオーディーが声を荒げると、
本を読んでいたハノエや、カードで遊んでいたクーアも驚いて顔を上げる。
一瞬、しんと静まったけれど、クーアが静かに言った。
「……なら、オーディー様も一緒に行けばいいんじゃないの?」
「……私は生憎、その日は用事があります!」
オーディーは決まり悪そうな顔をして、おつかいしてもらった荷物を持つと、その場から逃れるように部屋を後にする。
部屋を出る直前には、もう一度皆を振り返ってもう一度念を押していた。
「いいですか!?マチアもカロムも、ハノエもクーアも!
大神官の行列を見に行かない事!家で大人しくしていてください!
勝手な事をしたら、いつものお仕置きでは済ませませんからね!?」
そう言いつけたオーディーの姿が見えなくなると、最初に不満を漏らしたのはカロムだった。
「何だよオーディー様のあの態度!!そんなに心配しなくても大丈夫だっての!
一方的に決めつけて感じ悪い!」
「いつものオーディー様らしくなかったね……」
ハノエが心配そうにそう言うと、クーアもぽそっと「嘘つき……」と呟く。
そんな皆を、マチアが困ったように宥める。
「や、やめよう皆……オーディー様には、お考えがあるんだよ……。
それに、言っている事は正しいもの……確かに人がたくさんで危ないだろうし……」
「けど、マチアちゃん大神官様に会えるって楽しみにしてたじゃないか!」
「いいんだ。オーディー様がダメって言う事はダメだよ」
マチアが寂しそうに笑う。カロムは何か言いたげな納得のいかない表情で……
「ふい――っ!お風呂掃除終わったよオーディーっ!ご褒美はキスがいいです〜〜っ
と、ご機嫌で登場したケキャキャが場の雰囲気をぶち壊した。
カロムとハノエがげんなりした表情でケキャキャを見る中、マチアは笑顔で
「お疲れ様でしたケキャキャさん!オーディー様は別の部屋に行きましたよ?」と親切に説明していた。
そして、クーアは無表情&無言で“遊んで”とばかりに、カードの束をケキャキャに手渡す。
ケキャキャはカードの束を受け取ってクーアをねっとり撫でつつ、子供達の微妙な雰囲気を察知した。
「ん?みんな何かあったの?元気無い??」
「クーアを変な手つきで触らないで下さいッ!!」
「大神官様を見に行くのをオーディー様に強引に禁止されて、皆でガッカリしてんだよ……」
「人が多くなるから!ぼ、僕らを心配しての事なんです!!ガッカリだけど仕方ないんだよカロム??」
「……僕は別に興味ないけど……」
「ほー!そうなんだぁ??」
子供達それぞれの発言を受けて、ケキャキャは目を丸くする。
そして、物思いにふける様に目を閉じて頷きながら言う。
「そうだよなぁ、大神官様って全教会の神官のトップ?代表?1番偉いんだっけ?
滅多にその辺歩かないし、この世のものとは思えぬ美人さんだし……見たい人が殺到しちゃうよね?
まー俺の婚約者ほどではないけどさ……」
「!!ケキャキャさん、大神官様を見た事あるんですか!?」
「あるある!彼って普段王都の教会にいるでしょう?城で式典ある時には呼んだら来てくれてるし!」
食いつくマチアとノリノリで話すケキャキャの傍で、カロムとハノエは怪訝そうだ。
「何でケキャキャが城の式典に関わってるみたいに喋ってんだよ……」
「絶対嘘だよ。本気にしちゃダメだよマチア?」
クーアはケキャキャの手からカードの束をもぎ取って一人で遊び始めていた。
マチアは瞳を輝かせてケキャキャに尋ねる。
「だっ、大神官様……どんな方なんですか??」
「そうだなぁ……髪は天から降り注ぐ光のように黄金色で長くてゆったりと波打ってて、
お肌はスベスベ真っ白で、瞳は清らかな水のように青くって!
笑顔が超癒し系で、優しくて物腰柔らかで、一挙一動が上品でキラキラーって感じだよ!」
「す、素敵…… あぁ、一目でいいからお姿を見てみたい……!!」
うっとりと頬を染めて幸せそうなマチア。
それを真剣に見つめるカロムと、弛んだ笑顔で見つめるケキャキャ。
そのケキャキャが気づいたように付け加えた。
「あ、でも彼、マチアに何となく似てるかも!」
「えぇっ……!!そんな事絶対無いです……!!」
ケキャキャの言葉に照れて焦っているマチアは、それでも嬉しそうで。
カロムの胸にある決意が芽生える。


その夜。
カロムはマチアにこっそり声をかけた。
「マチアちゃん……!!」
「??どうしたのカロム?」
「こっそり聞いてくれ!内緒の話だ!」
マチアの手を取って引き寄せ、小声でそう伝えたカロム。
マチアは少し驚いた顔をしたけれど、その後は少し楽しそうにカロムを見上げて、
合わせるように小声で囁く。
「どうしたの……?」
「!!」
その姿と声と……自分が手を握っている事に気付いて思わずドキドキしてしまうカロムは、
自分が情けなくなりながらも、頑張って言葉を続ける。
「マチアちゃんを、こっそり大神官様の所へ連れてってあげる……!!」
「!!だ、ダメだよそんなの……!!」
「怖がらないで!マチアちゃん、すごく大神官様に会いたいはずだ!
それに、今日のオーディー様の強引さはおかしいよ!従う必要なんて無い!!」
「でも!!」
必死に断ろうと手を引くマチアを、カロムは離さなかった。
懸命にマチアの願いを叶えてあげようと説得する。
「パっと行ってパッと帰って来ればバレやしない!
バレたって、俺が無理やり連れだしたって言うから!!マチアちゃんは絶対俺が守る!」
「そんな優しい事を言ってくれるカロムを、悪者になんてできないよ……!!」
「っ、マチアちゃん……!!」
悲しげに瞳を潤ませるマチアを見て、カロムも嬉しさとトキメキで言葉に詰まる。
すると……
「これは紛れもない愛だね!!」
「「わぁぁっ!!?」」
叫んで急に飛び出すケキャキャと、驚くカロム、マチア。
ケキャキャは得意げに言う。
「二人の愛溢れるやり取りを聞いて、事情は大体分かったよ!
俺も協力する!三人で築こう愛の大三角形!!」
「おっ、お前ふざけんな!どっから!誰が、お前なんかとっ、
俺はただ、マチアちゃんに、っ……ぁああ愛とかっ、あ゛ぁクソ!どっか行けぇぇ……え?」
いつも通りケキャキャに拒否反応を起こして追い払いかけるカロムだが、
ハタと何かに気付いて……
「待てよ?大人がいれば、問題ない……」
「ウイ!」
ケキャキャがビンッと親指を立てると、カロムは複雑な表情ながらニヤリと笑う。
「た、たまには役に立つじゃんか、変態……よし!特別に保護者として連れてってやる!
ただし絶対変なことすんなよ!?」
「やったぜ!任せて☆!」
「えぇええええっ……!!」
そして、律儀に小声を続けるマチアの控えめな絶叫が響いた。



そんなこんなで大神官様来訪当日。
オーディーの目を盗んで見に来たカロム、マチア、ケキャキャの三人は、案の定の人ごみと格闘していた。
「うっわすげぇ人……!!マチアちゃん大丈夫!?」
「う、うん!!カロムが手、握っててくれるから……!は、離さないでね……?」
「まままっ、任せて!!」
カロムが甘酸っぱい思い出をこっそり胸に溜めていく中、ケキャキャは汗をかきつつ二人の後ろから、
二人を守りつつ人を掻き分けるという、器用な頑張りをみせていた。
「ふ、二人共頑張って!こういうのはね!遠慮せずに、獲物を狩る主婦のようにグイグイ前に行くのよ〜〜っ!!
ほら!俺がグイグイ前に連れてってあげるわよ〜〜っ!」
「おおっ、ケキャキャすげぇ!!」
「ありがとうケキャキャさん!!」
ケキャキャと共に、前に身を進める事ができていく二人。
次第に周りから「大神官様――っ!」という歓迎の声が幾重にも重なって聞こえてくる。
そしてついに……!!
「あ!」
マチアの憧れの“大神官様”が目の前にいた。皆に、優雅に手を振っている。
見た事も無い豪華絢爛な神官服が、ケキャキャの説明通りの美しい容姿をさらに輝かせ、
気品と神聖さ溢れるオーラも相まって、マチアは顔を真っ赤にしてしまって息が止まりそうだった。
「だ、大、神っ、官……様……!!」
やっと声が出せたと同時に感極まって泣き出してしまうマチア。
そんなマチアの感激声に反応したのか、大神官がスッと視線をくれた。
「!!」
その美しい青い瞳と目が合った瞬間、マチアの表情が一瞬で青ざめる。
何故か、悪寒が全身に駆け巡る。
あっという間に大神官の一行は通り過ぎてしまったけれど、
隣のケキャキャやカロムは一瞬前のマチアのように大興奮している。
「ひゃぁあああ!!やっぱ大神官様って美人だなぁぁ
「すっごかったな!どうだったマチアちゃん!満足!?」
「っ、もう、戻ろう……!長居し過ぎたかも……カロム、ケキャキャさん、行こう……!!」
と、青ざめるマチアがサッサとその場を去ろうとする。
逃げるように早足になるマチアに、ケキャキャとカロムが心配しながら寄り添って帰っていく。


こうして実家のような教会に帰ってきた3人が玄関を入って鉢合うのは当然……
「マチア!カロム!貴方達……!!」
「ままま待ってオーディー!これにはのっぴきならない深い訳が……!!」
「お前は黙ってろ!!」
バキィッ!!
「ごふぅっ!!」
すっかりご立腹のオーディーは、ケキャキャを容赦なく殴り飛ばして、
その場で強引に“マチアの”手を引いて膝の上に乗せ、お仕置きを始めようとしている。
引きずられ気味で怯えるマチアは抵抗もできず、涙目でひたすら謝っていた。
「ごめんなさい!あぁ、ごめんなさいオーディー様!!」
「言ったでしょう!?“勝手な事をしたら、いつものお仕置きでは済ませない”と!!
それでも言いつけを破ったという事は、そういう事ですよね!?」
「まっ、待ってくれオーディー様!!違うんだ!マチアちゃんは悪くない!俺が無理やり……」
慌ててオーディーの縋りつくカロムだけれど、乱暴に振り払われて――
「心配しなくても、後で貴方もたっぷりお仕置きしてあげますよカロム……!」
「うっ!」
見た事も無い冷たい目をしたオーディーのかざす手によって、
かけられた何らかの術によって、動けなくなってしまう。
マチアの悲しげな声が響いた。
「カロム!!」
「貴方は人の心配をしてる場合じゃないでしょう!?」
オーディーはそうマチアを怒鳴りつけて、服の上から思い切りお尻を叩いた。
バシィッ!!
「きゃあっ!!」
「いけない子……!あれほどダメだと言ったのに!!」
ビシッ!バシッ!バシィッ!!
「ひゃあああっごめんなさぁぁい!!」
マチアが辛そうにもがいても、オーディーは躊躇なくお尻を叩き続ける。
叩かれ慣れていないマチアは怯えて縮こまって、手が振り下ろされるたびに何度も何度も謝り続けた。
「うっ、ぁあオーディー様ぁ!ごめんなさい!ごめんなさい許してください!!」
「何言ってるんですか!こんな少しで許されるわけないでしょう!?甘ったれるんじゃありません!」
「うわぁあああん!ごめんなさぁぁい!!」
「謝れば済むと思ってるんじゃないでしょうね!?貴方がよく反省できるように後でお道具も使って……
あぁそう言えば、脱がせてなかった。悪いお尻は直接お仕置きしなくてはね!」
「ひぃぃっ!!わぁああん!ごめんなさぁぁい!」
「待てよ!!」
今にも泣き出しそうなマチアの姿を見て、声を荒げたのはカロムだった。
彼はオーディーを睨みつけて叫ぶ。
「俺達は確かにオーディー様の言いつけを破ったけど!
ケキャキャを連れて行ったんだ!俺達だけじゃない、ちゃんと、大人と一緒に行った!
それでもダメだったのか!?そんなに怒る事無いだろう!?」
「…………私が“やるな”と言った事を貴方達が“やった”。それが全てでしょう?」
オーディーは薄く笑いながらそう言って、マチアの神官服を捲って下着を脱がせて、
再びお尻を叩き始める。
バシィッ!ビシッ!バシッ!!
「うわぁあああん!!」
「ねぇマチア!?貴方はちゃんと反省してるんですか!?
いい子の貴方が悪い事をしてまであの男を見て……それでどうでした!?有意義な時間でした!?」
「ごめんなさい!ごめんなさぁぁい!どうしてもっ、一目お会いしたくてぇぇっ!!」
「それで、カロムやケキャキャが貴方に協力して!?いいですよねぇ貴方は!!
その美しい見た目で誰彼かまわずたぶらかして、そうやって望みは全部、叶えてしまうんでしょう!?」
「うわぁああああん!!」
バシッ!バシンッ!ビシィッ!!
泣いているマチアを叩きながらのオーディーの言葉に、
カロムはまたしても黙っていられずに叫んだ。
「いい加減にしてくれ!今日のオーディー様おかしいよ!!マチアちゃんを侮辱するな!!」
「うるさい!!コイツの正体は――」
「オーディー!!」
「!!」
ケキャキャがオーディーの手を掴んで止める。
そのまま、必死にオーディーに声をかけた。
「ねぇ、君らしくないよどうしたの!?マチアの事離してあげて!
そんで謝ってあげてよ!こんなのもうお仕置きじゃないって!」
「あ……貴方には関係ないでしょう!!?彼のお仕置きだって、まだ終わってないんです!
大体、貴方も同罪……」
「俺一つ疑問に思うんだけど!」
言いながら、ケキャキャはオーディーの体を強引に引っ張り上げる。
膝から軽く転がり落ちたマチアにはカロムがすぐに駆け寄って何事も無く、
一方のオーディーが今度はケキャキャの膝の上に乗せられてしまって驚いた悲鳴を上げた。
「ひゃぁあっ!?」
「オーディーが悪い子だった時は誰がお仕置きするの!?
……って俺じゃーん!俺しかいないじゃ――ん!!アチャァ参ったなー☆役得役得ゥゥ♪!!」
「何すっ、ふざけっ、離せ!!」
混乱で言葉が詰まり気味のオーディーがバタバタと暴れているけれど、
ケキャキャは気にせず手を振り下ろした。
「大丈夫!ここからは真剣!!」
バシィッ!!
「うぁあっ!?お前ホントふざけんなよ!?」
一瞬で“お尻を叩かれた”と自覚したオーディーが、顔を赤くして叫ぶ。
するとケキャキャはいつになく真剣な声色で言う。
「……言ったでしょう?俺は今、真剣!」
ビシッ!バシィッ!バシィィッ!!
「あぁああああっ!」
「それにどっちかって言うと、“ふざけてる”のはオーディーだと思うけど?
マチアが俺やカロムを誑かした〜なんて、難癖付けてさ!自分が何言ったか分かってる!?」
「っ……!!」
バシッ!ビシィッ!ビシッ!!
気まずそうに黙ったオーディーだったけれど、何度かお尻を叩かれると弱弱しく口を開いた。
「だ、だって……!!」
「“だって”ってつくと大概言い訳だよねぇ。
神官だったら誰だって大神官に憧れるよオーディー。別に変な事でも悪い事でも無い。
人ごみは確かに危ないけどさ、カロムはちゃんと俺という大人に頼ってくれた。
教えてよ。オーディーは何をそんなに怒ってるわけ?
“私の言う事を聞かなかったから”って??それじゃ結局、オーディーのワガママなわけ」
バシィッ!!
「あうぅっ!!」
「俺何か間違った事言ってる?」
珍しく、真面目にまともな事を言ってくるケキャキャに、
反論のし辛いオーディーはそれでも、震える声で、真っ赤な顔で、言い返す。
「う、うる……さい……!!お前が何……偉そうに……!!」
「う〜ん……」
この態度にはケキャキャも困ったように唸って……
「あ。そう言えば、脱がせてなかった。悪いお尻は直接お仕置きしなくちゃ……だっけ??」
「!!や、やめろ!!」
赤面しっぱなしのオーディーを本気で慌てさせていた。
そこを救うのはやはり……
「もういいですケキャキャさん!!」
と、心配そうな表情をするマチアだった。
マチアは泣きそうになってこう続ける。
「オーディー様は僕達を心配して下さってた!!
僕らが言いつけを破って心配をかけたからいけなかったんです!巻き込んでごめんなさい……!!」
「マチア……!あの……!!」
こんな風に庇われたオーディーは……
「っ、ごめんなさい……!!貴方に酷い事を……!!」
一気に涙を溢れさせて謝っていた。
それを拭っているのか、顔を隠すように手で覆って、涙声をを続ける。
「私……ごめんなさい、個人的な事で……!貴方を大神官に近づけたくなかった……!!
もし、貴方が彼の目に留まって、気に入られて連れて行かれたらって思って!!
貴方にとっては、それがいい事なのに私っ……私、貴方を失いたくなくて、っ、ごめんなさい……!
お仕置きだなんて言って、怒りにまかせて、貴方を……本当に、ごめんなさい……!!」
「オーディー様……」
マチアはオーディーに近づいてかがむと、そっとオーディーの手を顔から剥がして、優しく声をかける。
「大神官様は、とても美しくて素晴らしい方でした。僕の理想通り……」
「……ッ、うっ……」
「けれど、目が合った途端、何故か恐ろしく感じてしまった……何故か……それに……
僕、大きな教会よりも、ここでもっともっと学びたいと思っています。
オーディー様や皆と過ごす日々が幸せで、もっともっとここにいたいと思っています」
「マチア……!!」
またブワッと目に涙を溢れ零れさせるオーディーに、マチアは微笑んだ。
「どんな罪も絶対に裁かれ、許されるものだと思います。僕もオーディー様も裁かれた……。
僕はオーディー様を許します。だから、もう泣かないで下さい。ね?カロムも怒ってないよね?」
「……オーディー様のそんな姿見たら、もう怒れねぇよ……」
カロムは、オーディーの方を見られない様子で、顔を赤くして頭を掻いていた。
オーディーもつられるようにまた赤面しつつ、慌て気味に謝った。
「か、カロムもごめんなさい……!!」
「い、いいよもう!オーディー様にだって調子悪い日あるよな!俺達行くから!
これからはいつものオーディー様に戻ってくれよ!?ぃ行こうマチアちゃん……!!」
「うん……また後で、オーディー様!」
カロムはマチアを連れて行って、子供達がいなくなる。
すべてを見届けたケキャキャがのほほんと言った。
「マチアやカロムと仲直りできて良かったねオーディー!!」
「……テメェ……」
「テメェ!?」
そしていつも通りの扱い。
オーディーが膝の上でバタバタ暴れながら怒鳴る。
「よくも子供達の前で辱めてくれましたね!?確かに私が愚かだったにせよ!
もっとやり方ってもんがあるでしょう!?ほんっとデリカシーの無い!最低ですね!!」
「わわわごめん!!俺も必死でぇぇ!!」
「だけどっ……!!」
けれど、途中からまた涙を流して……
「あ、ぁ、貴方がこうしてくれなかったら……!
私、きっと、もっと取り返しのつかない事をしていた……!!ありがとう……!!」
「オーディー……」
涙でボロボロの声になりながら必死に紡がれた言葉に、ケキャキャは胸がいっぱいになる。
そして、オーディーは続けて言った。
「……あの……っ、脱がせて、続きを……お願いしていいですか……!!」
「……いいよ。安心して。今、興奮しなかった」
ケキャキャは、清らかな気分でオーディーの神官服の裾を捲って、下着を下ろす。
ごく自然に、本音が零れていた。
「オーディーのそういう真面目なトコ、すっごい神官っぽくていいと思う」
「うるさい……いいから!早く!!」
「う〜〜……褒めたのにぃ。分かったよぉ」
少し恥ずかしそうなオーディーに急かされて、
珍しく紳士的なケキャキャが彼が望むお仕置きを再開した。
バシッ!ビシッ!バシィッ!!
「うぁっ、あっ!!んっ、くっ!!」
オーディーは痛そうな表情で身を捩りながらも……
「ふっ……うぅっ……!!」
ビシッ!ビシィッ!バシィッ!!
涙を浮かべても、口元を押さえて悲鳴を殺しつつ、
自分の罪深さを、もうしばらく反省していた。



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【作品番号】kyoukai2
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