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奥さん米屋です
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この世には2種類の人間がいる。
ご飯派とパン派。
俺、米屋八十八郎はご飯派だ。なんせ米屋の息子だからな。
毎日米を宅配する仕事も俺の生きがいとなっている。
当たり前じゃないか。俺は米派だ。
しかし、正直言うと、俺が米運びに生きがいを感じている理由はそれだけじゃない。
最近、俺の上得意様に素敵な人がいてね……。
おっと、与太話をしている間に上得意様の家の前に着いちまった。
俺はいつものように玄関のチャイムを鳴らす。

ピンポーン。

「奥さん、米屋です」

……………。
返事が無い。いつもならここの奥さんが俺を迎えてくれるのに。
留守だろうか?
余談だが、俺はこの家の合鍵を持っている。
これで家の中に入る事も可能なのだ。
しかし、だからと言って勝手に入るのも無礼だろうか?
どうする?

A、入ってご飯を炊く。
B、帰ってご飯を炊こう。やはり勝手に入るのは失礼だ。

よし、入ってご飯を炊こう。奥さんに美味しいご飯を食べてもらうのが俺の使命だ。
俺は合鍵を使って家の中に入った。

「奥さん、米屋です。美味しい米を宅配に来ましたよ!」

…………返事が無…………

パシィッ!!

「!?」

何だこの音は?
急に聞こえてきた甲高い音に、俺は辺りを見回す。

パシィッ!!パシィッ!!

音はどうやら奥さんの部屋から聞こえてくるらしい。
え?どうして奥さんの部屋を知っているかって?
当たり前じゃないか。俺は米派だ。
そういうわけで俺は奥さんの部屋に近づいていく。
音がだんだん大きくなり、くぐもったような奥さんの声も聞こえる。
いったい何をしているってんだ奥さん!
奥さんの部屋のドアノブはあっさり回って、どうやらロックはしていなかったらしい。
俺はそっとドアを開けて中の様子を見た。
すると……

パシィッ!!

「ああんっ!ごめんなさい!ごめんなさいブレッドさん!」

ベッドの上、裸エプロン姿の奥さんは泣いていた。
立て膝で伏せって、高く持ち上がった奥さんのお尻。
それを彼女は自分で叩いている。
奥さんの持っているアレは何だ?新種のしゃもじだろうか……?

パシィッ!!パシィッ!!

「あっ、あぁんっ!痛い……痛い、ごめんなさい、ごめんなさい……」

黒いしゃもじで尻を打つたび、奥さんは体を震わせる。
いったいいつからこれをしているのだろう。お尻は真っ赤だ。
それでも、彼女は叩き続ける。自分の尻を何度も何度も。
そのたびに長い黒髪がサラサラと揺れた。

パシィッ!!パシィッ!!パシィッ!!

「はぁ、はぁ、んっ、あぁブレッドさん……痛い……もう許して……私は……あぁんっ!」

奥さんは息を荒げ、肩で息をしながら手を振り下ろす。
痛いと言いながら頬は興奮で紅潮し、瞳は幸せそうに揺らぎ、挙句、口からは涎を垂らしている。
そうだ奥さん。アンタは喜んでいるようにしかみえない。痛いなら止めればいいじゃないか!

「ぅ……はぁあっ!痛いぃぃ!あぁぁっ!ダメ!お尻壊れちゃうぅっ!」

俺は混乱した。
こんな奥さん見た事ない。
普段の奥さんはおしとやかで声のトーンも控えめだ。
そんな彼女が声を荒げて、自らのお尻を叩いている……意味が分からない!
しかも夫の名前を叫びながら、だ。

パシィッ!!パシィッ!!パシィッ!!

尻を叩く音が一定のリズムで俺の脳に染み込んでいく。
彼女が打つたびに、大きな胸と赤いお尻が淫らにうねる。
彼女が打つたびに、苦痛と恍惚が混じった厭らしい表情になる。

「あぁん!良い子になるわ……なるから、あっ、んっ!」

パシィッ!!パシィッ!!パシィッ!!

止めてくれ奥さん。止めてくれ。
このままでは俺が……
俺はやっと、俺が奥さんを食い入るように見つめていた事に気づく。
ドアノブを握る手は汗でぐっしょりしており、何だか下半身が苦しい。
なのに金縛りのようにここから動けない。
くそう!米派の俺が、こんな事で……!!

「はぁ、はぁ……あぁあ!ブレッドさん!ごめんなさい!そろそろ私……!」

奥さんは恍惚とした表情に期待が混じる。
ふるふると震える手はお尻の一番紅いところを狙っていた。
何を……する気だ?

奥さんが唾を飲み込んで唇を舐める。
俺もつられて生唾を飲み込んだ。

そして……

バシィィッン!

「……きゃぁああああんっ!!」

ひときわ大きい音が、悲鳴があたりに響いた。
奥さんが今までで一番強く自分の尻を叩いたのだろう。
奥さんは大きく頭を反らせ、透明な液をトロリと吐き出す。
ご飯を食べる方の口から。

その後は糸が切れた人形のようにベッドにべったりとうつ伏せて、
目を閉じ、幸せそうに荒い呼吸を繰り返していた。
俺はやっとドアノブから手を離す事が出来た。
そのまま一歩、二歩、静かに後ずさり、後は猛ダッシュで家を出た。

足音で気付かれたかもしれない。
しかし、奥さんに合わせる顔なんかない。
俺は走って帰りながら考える……。
どうして、ご飯を炊き忘れたのか。
そしてどうして、お尻を叩きながら奥さんが叫んでいたのは俺の名前じゃないのか……

奥さんの真っ赤な尻。いやらしい泣き顔。
打たれるたびに体をビクビクさせながら、俺の名を、呼んで欲しい。
――無意識にそう思った。
(俺は……奥さんの尻を、叩きたいとでも、言うのだろうか……!?)
心の中の問いに答えは出ないまま……俺は必死に走り続けた。

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【作品番号】kome


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