TOP>小説 戻る 進む |
![]() |
姫神様フリーダムanother(大人立佳編)
|
|
ここは神々の住まう天の国。 その日、この国の幼い皇子、立佳の叫びが城中にこだました。 「何でぇぇぇぇぇっ!!何で勝手に捨てちゃったのぉぉぉぉっ!!」 泣きだしそうな勢いで球里に縋りつく立佳。 そんな立佳に毅然とした態度で言い放つのは従者の球里だ。 「『何で』もなにも、あのようないかがわしい本は立佳様のためになりません! しかもあんなに大量に持っているなど……言語道断です!この球里が責任を持って全て処分させていただきました!」 「ふざけないでよ!もう絶版のとか、袋とじ開けてないのとかあったんだよ!? まだまだ使えたのにヒドイ!!同じ男とは思えない!!」 感情のまま喚き立てる立佳。もう半泣きだった。しかし、風が吹けば崩れそうな脆い笑顔で最後の救いを従者に求めた。 「ねぇ……本当は捨ててないんだよね?どこかに隠してあるんだよね……? 10年間一緒にやってきたじゃないか……捨てたら、オレの悲しみがどれほどのものかぐらい、分かって……」 「いいえ。すべて焼却処分しました」 「!!」 キッパリ言い切った球里に、縋りつく立佳の手から力が抜けて床にペタンと座りこんだ。 ショックで見開いた眼にはみるみる涙があふれ、それを隠すようにぐっと俯いて震える。 「許せない……いくら従者でもやっていい事と悪い事がある……絶対に許さない……お前だけはッ!!」 「立佳様、ご自身の年齢を考えてください。あれらは子供が持っていて良い本ではありませんよ?」 「お仕置きしてやる!わんわん泣くまでお仕置きしてやるから!覚悟しろ!」 「お戯れを……子供をお仕置きするのが大人です。逆はありえません」 球里はあくまで冷静に立佳を宥める。立佳の“お仕置き”との言葉にも真剣に取り合っていない。 しかし次の瞬間、立佳は片手を高らか上げてに叫んだ。 「『カリスマ秘術☆大人幻想』ぉぉぉぉぉっ!!」 「うわっ!?」 ボンッ!!と激しい音がして煙が巻き起り、球里は袖で口元を押さえて目を閉じる。 一瞬の爆発の後は煙が引いて、うっすら目を開けた球里は仰天した。 そこに立っていたのは見るからに青年。しかし、残っている面影は立佳のものだった。 「ほら、これで大人だから文句ないだろ?」 見覚えのある悪戯っぽい笑顔、しかし声は変声期を経た爽やかな声。 よくよく見れば冠や衣服は多少大人っぽくカスタマイズされていて、 これは間違いなく“成長した立佳”だった。 「り、立佳様……?どうして……?」 「『カリスマ秘術☆大人幻想』は見ての通り、オレを大人にしてくれる便利技。 本当は、お姉さんをナンパする時用に開発したんだ。 使うたびに免疫ができてかかりにくくなるから、なるべく使わないようにしてたのに……。 あーあ、次から使えなくなるかも」 「…………」 球里はまだ目の前の光景が信じられなくて絶句していた。 確かに表情や仕草は立佳なのだが……大人というだけでこうも雰囲気が変わってしまうものだろうか? 大人立佳は球里の混乱などお構いなしに微笑んで言う。 「そういうわけだから、もとはしっかり取らせてもらうよ球里?わんわん泣くまでお仕置き……覚悟はできてる?」 「い、いえ……そんな……」 「従者が主君の所有物を勝手に捨てていいと思ってるわけ?それも、とっても大切な物を」 「しかし……」 普段の立佳には厳しい事もキッパリ言えるのだが、成長後の立佳には妙に委縮してしまう球里。 大人ということで主君っぽさが割増になっているし……それに今の姿、立佳の父親の境佳に似ていた。 球里も何度かお仕置きされた事のある境佳に似ている姿で“お仕置き”と言われてしまうと逆いづらい。 こちらも信念を持ってやった事なのに、つい下手に出てしまう。 「貴方の為だと思って……どうかお許しください……」 「嫌だね。言っただろう?“絶対に許さない”って。こっち来て」 立佳は強引に球里を引きよせ、ソファーに座って膝に乗せてしまう。その上お尻を丸出しにして尻尾も押さえつけ…… 初めてとは思えない手際の良さで、あっという間に球里は叩かれる体勢だ。 抵抗もできず、しどろもどろで叫ぶのが精いっぱいだった。 「ま、待ってください!こんな……このような事は……!!」 「どうしたの球里?さっきからやけにオドオドしちゃって。かっわい〜ね〜♪」 「立佳様!!」 球里は赤面した。 こんな風にからかわれると、やっぱり相手は立佳なんだと思うのだが…… パァンッ!パンッ!パンッ! 「ひっ、ぁ……!!」 振り下ろされる平手は大人の腕力。さっきからどうしても境佳と重なってしまう。 「くぅっ……立佳様!やめてください……私はッ!!」 「何?言い訳なんて聞かないよ?」 「違うんです!!私は、貴方の為に……ッ!!あっ、ぅ!!」 パンッ!パンッ!パンッ! 「オレの為オレの為ってさ、その行為でオレは傷ついた!すっごく傷ついた! お前もオレの痛みを知るべきだ!」 「いっ、たぁ……そ、そんな……!!」 「お前は舐め過ぎたんだよ……オレのエロ本への情熱を!!」 「そんな事、得意気に言わないでくださいッ!!」 徐々にお尻がジンジン痛むのだが、球里は必死に立佳を説得しようとしていた。 会話していると本当にいつもの立佳だし、球里もだんだん調子が戻ってきて、だいぶハッキリ話ができそうだ。 こんな事はやめてほしいし、自分の気持ちも分かって欲しかった。 「今は分からないかもしれませんが、あんな本は今の立佳様には必要ありません! 何度も言うようですが、長い目で見れば貴方の為! 貴方だっていつか大人になれば分かってくださるハズです……!!」 「そんな言い方好きじゃない。今のオレの気持ちは無視していいって事?」 「そういう事では……」 「失望したよ球里」 パァンッ!! 「いぁぁっ!!」 思い切り叩かれたらしい強い痛みでのけぞってしまう球里。 「お前は何が何でも自分が正しいって言い草だね。 こうすれば少しは反省してくれると思ったのに……まぁいいや。反省するまで叩けばいいんだし」 「っ……立佳様!私の話を聞いてください!」 「聞いてるよ。お仕置きされてるのにお説教なんて笑っちゃうね。 オレはお前が反省するまで許さないから、発言には気を付けた方がいいと思う。以上」 立佳はそれだけ言ってまた球里のお尻を叩きだす。 パンッ!パンッ!パンッ! 「り、立佳様!!あぁっ!聞いて、ください!!」 「謝罪なら聞くよ。つまらないお説教なら聞き流すけど」 「どうして……!!」 どうして、分かってくれないんだ!と、球里は叫びたかった。 意地悪をしたわけじゃない、立佳の為だと思ったのに! お尻も叩かれっぱなしでだいぶ赤くなっていた。痛いやら無念やら情けないやらで泣きたくなってくる。 しかし、相手は立佳だし大人の意地で何とか我慢しようとしていた。 「どうして、ぐすっ、どうして……分かってくださらないのですか……!!」 「『どうして』はこっちのセリフだよ!オレがどれだけあれを大切にしてたか…… お前が心配すると思ってちゃんと隠してたのに!!」 パンッ!パンッ!パンッ! 叩かれながら、球里はハッとした。確かにひっそりと隠してあった本を引きずり出したのは自分。 境佳に“変な本があったら没収してくれ”とは頼まれたが、あんまりな本が多くてショックで捨てたのは自分。 その時はショックと“何とかしなければ”と思うばかりで立佳の気持ちにまで気が回らなかった…… こう思いだせば、今叩かれているお尻の痛みより立佳の悲痛な叫びが気にかかる。 「お前の言ってる事分かるよ……オレの事思ってくれてるのも知ってるよ! でも、好きなんだよ!譲れないんだ!あれは宝物だった!勝手に捨てるなんて許さない! お前だってそうだろう!?本好きのくせに!集めてる全出版社の『ごんぎつね』捨ててやろうか!?」 「うっ、あぁっ!や、止めてください!それだけは!」 「だったら、頭いいんだからオレの気持ちぐらい分かれよ!!」 バシィッ!! 「あぁぁ!!ごめんなさい!!」 立佳の声今にも泣きそうだった。とたんに球里はすごく申し訳なくなってしまったのだ。 とっさに“ごめんなさい”が出たのも、自分も悪かったと思い始めたから。 「バカ!カタブツ狐!せめて、オレに一言あってもよかったじゃないか!!」 バシッ!ビシッ!バシッ! 「ご、ごめんなさい!申し訳ありませんでした、立佳様!貴方の、気持ちも考えずに……!!あ、うぅっ!」 「今さら謝ったって遅いよ!!」 バシッ!ビシッ!バシッ! 立佳は完全に怒ってしまったらしく、何度も強くお尻を叩かれる。 すでに痛みが泣かない限界に差しかかっている球里が必死に謝るも効果無し。 無意識に暴れてしまう。 「ご、ごめんなさい!いやっ、許してください!で、でないと私は……!!」 「何!?まだ何かカードがあるの!?『実家に帰らせていただきます』とか言うつもり!?」 「泣いてしまいますッ!!」 追い詰められていたので思わず本音を叫んでしまった球里。 一瞬止まった空気を吹き込んだのは、立佳の軽い笑い声だった。 「ははっ、いいね。もともとはそういう目的だったし……ほら、“わんわん泣くまでお仕置き”ってさ」 「今ならそれもしかたないと……ひっく、思います……。 わ、私が泣く事で貴方の無念が晴れるなら……うっ、どうぞ存分に……ぐすっ……」 「……ズルイよ。そんな言い方。本気になれない」 「私は、うっく……自分の非は素直に認めます。言い訳ばかりの、貴方とは……っ、違います……」 「そうだね。オレも見習わなくっちゃ。じゃあ、最後まで立派なお手本よろしく♪」 バシッ!ビシッ!バシッ! からかう調子でそう言った立佳だったが、手は本気だった。 球里の泣かない限界もあっけなく越える。 「うわぁんっ!ごめんなさい!ごめんなさい立佳様!許してくださいぃっ!」 「やっと反省してくれたんだもん。ここから大泣きしてもらわなきゃ」 「いやっ……やめてください!お願いですからぁぁっ!」 「さっき“存分に”って言ったじゃん」 「そうですけどぉぉっ!!痛いですぅぅっ!」 バシッ!ビシッ!バシッ! 泣き喚くも、立佳は叩いてくる。暴れるも、体は動かない。楽になれるわけでもない。 痛みだけが溜まってどうしようもなくなってきた。 「立佳様ぁ!痛いぃ!嫌ですぅ!!も、これ以上は我慢できません!やぁぁ!」 「もう少し我慢してよ。エロ本廃棄の罪は重いんだよ?」 「ごめんなさいぃ!!もうしませんから!もう二度としませんからぁぁ!うわぁぁああん!」 こんな風に子供みたいに泣き喚くと、冷静になった時に居たたまれないのは球里も分かってるのだが 分かっているところで我慢できなかった。 結果、立佳の言った様にわんわん泣き喚く事に。 バシッ!ビシッ!バシッ! 「うわぁぁああん!ごめんなさい!!立佳様、ごめんなさいぃ!!うわぁぁああん!」 「“謝ればいいってもんでもないですよ”って言ったの誰だっけな〜〜?」 「私ですぅ!!でもごめんなさぁいぃ!!許してくださいぃ!!ごめんなさいぃぃっ!」 「分かったよ。そんなに言うなら許してあげる」 ここまでいくと立佳は球里が泣き叫ぶ姿を可哀想に思って、許してあげた。 けれども球里は泣きながら座りこんで絨毯を引っ掻いて…… 「土に埋まりたい……」 「た、球里!!そんなに落ち込まないで!反省してくれたならいいから!」 「しかし、立佳様にこのような情けない姿をみられてしまってぇ……うううっ……」 落ち込んで泣く球里をどうやって慰めようかと考える立佳。 そのうち、ポンと手を打って球里の頭を撫でた。そして真面目な声で言う。 「色々苦労をかけたな、球里……“私”はお前がいたからここまでこれた。 子供の頃はバカな事もしたけど、お前が真面目だから常に正しい道に戻れた。 本当に感謝してるんだ。ありがとう」 球里は驚いた顔で立佳を見た。 これは立佳なりの『球里が望むであろう未来の再現』。 球里もすっかり酔わされてしまったらしく……感無量の表情でさっきまでと違う涙を流す。 「立佳様……何とご立派になられて……球里はどれだけこの日を待ちわびた事か…… うっ、うぅぅっ……嬉しゅうございます!!」 「これからも、私の傍にいてくれるか?」 喜びに咽ぶ球里を立佳が優しき抱きしめると、球里は強く縋りついてくる。 「はい!もちろんでございます!この命尽きるまで、立佳様のお傍に……!!」 「ありがとう。球里……」 最後にそっと『――って、いつか言うから。見捨てないで待っててよ』と囁くと、球里は泣きながら何度も頷いて 立佳に縋りついていた。 【おまけ】 球里「立佳様?許可得ず貴方の大切な物を捨てて、貴方を傷つけた事は反省しましたが、 いかがわしい本を持つ事を許したわけではないですからね!?」 立佳「ふーん。へーぇ。可愛いの膝の上だけ?」 球里「……いつまでも立佳様の手を煩わせる可愛い従者ではいけないと思い、私も勉強したのです。 あの『大人幻想』の解除方を」 立佳「え!?嘘でしょ!?(たぶんもう使えないけど……球里め、侮れない!)」 球里「試してみます?」 立佳「球里!所持可能なエロ本のラインを決めよう!オレ達はきっと和解しあえるはず! 例えばこれなんか全然セーフだよね!?」 球里「うわぁぁぁぁっ!!なっ、何ですかその本は!?またそんな本をいつの間に!?」 立佳「えっ!?これでダメなの!?じゃあこっちは!?」 球里「ここここっちに向けないでください!どうして捨てたばかりなのに増えてるんですか〜〜ッ!!」 |
|
戻る 進む TOP>小説 |