15デイ〜アスレチック会議〜 今日はゆうと二人でアスレチック公園に来ていた。 ここで『まなぶを弟にする作戦会議』を開くらしい。 「また、まなぶ君が怒らない?」 「だ・か・ら、まなぶが塾でいないこの日を選んでるんだよ! まなぶには兄ちゃんに会うって言ってない☆ へへっ、まなぶにナイショで兄ちゃんに会ってるの… 悪いなって気もするけど、何だかワクワクする…」 今日のゆうは、まなぶがいなくても嬉しそうだ。 このちょっとした秘密の計画を楽しんでいるらしい。 何にしても、ゆうの笑顔を見ていると俺も元気が出てくる。 「とりあえず、遊んでから会議な! 兄ちゃん、あの網みたいなヤツ登ろう!」 活動派のゆうはさっそく走っていってネットに登り あっという間に上まで着いて、今度はうんていを進んでいく。 その先で棒に登ったり滑り台を滑ったり… 器用にアスレチックをクリアしていくゆうはやはり運動神経がいいらしい。 俺は小さい子に囲まれて遊具に登る気はしなかったし ゆうみたいにすんなりこなせる自信も無かったので下から彼を見守っていた。 途中、下の俺に気づいたゆうが叫んだ。 「にーいーちゃーん!!遊ばないの――――??」 「俺は遠慮しとくよ――――!!」 「え〜〜〜〜〜〜!!」 俺の返事を聞くと、ゆうは不満そうな声を出して その場からロープをつたって降りてきた。 そして俺の方へ戻ってきて俺の腕をぐっとつかむ。 「兄ちゃんと一緒に遊びたい!!」 「そうは言っても、あのアスレチック子供用に作ってあって 俺の体のサイズに合わないんだ。それに俺、 ゆうが上手にアスレチック渡るのもう一回見たいな! ほら、ここから見てるから行っておいで?」 「兄ちゃんと一緒じゃなきゃ楽しくないじゃん!!」 あらら…まいったな。ゆうが機嫌悪くなってる…。 とはいえあのせまっこいアスレチックに登る気にはなれない…。 ジュースでも飲ませて機嫌を直そうかとキョロキョロしていると いい物が目に入った。 「じゃあさ、ゆう、アレに乗ろうか!」 「アレ…?あ!車!!」 俺の指差したゴーカートを見た瞬間、ゆうの目がキラキラ輝く。 あれなら何とか二人で乗れそうし、そこらへんのファミリーに紛れれば 人目も気にならなくなるだろう。 「兄ちゃん!早く乗ろう!!」 はしゃいで先走っているゆうを追いかけ、ゴーカートに乗り込んだ。 ゆうが前で俺が後ろ、俺が座っている足の間にゆうが座る形になっている。 速度もあまり出ないし、レールの上しか走らないが ゆうは嬉しそうにハンドルを回していて、何だか微笑ましい。 「兄ちゃんも運転する?」 少し首を回してゆうが俺に問いかける。 ゆうとこんなに距離が近いのは初めてかもしれない。 「ううん。今日はゆうに任せるよ。」 「オッケー!んじゃあ、スピード上げるからしっかりつかまっててね!」 ニコッと笑ってまたくるくるとハンドルを回しているゆうの姿を 見ているだけでただのゴーカートも楽しく感じる。 もちろんスピードは上がらないのだが、無邪気な彼に合わせて その小さな腰に腕を回してつかまる俺であった。 さて、ゆうのドライビングテクニックを満喫したら昼ごはんの時間になった。 お父さんお手製のサンドイッチを食べながら 遅ればせながらの『まなぶを弟にする作戦会議』を開く。 「んむ〜!!豊太郎のサンドイッチおいひぃ!!」 「本当においしいね。すごいなぁお父さん。」 まぁ開始から五分程度はサンドイッチの話題だった。 その後は本当に議題を話し合った。 「んでさ〜、まなぶの事だけど、まなぶが兄ちゃんを避ける理由は ズバリ『人見知り』だと思うワケ!!だって兄ちゃんに悪いトコないもん!」 「おお、ありがとう!そうか…人見知りか!」 「よーするにまなぶが警戒しないように慣れればいいんだよ! まなぶと会って、しゃべって、遊びまくる!! まー慣れてくればアイツもツンケンしなくなるよ。 兄ちゃんは兄ちゃんなんだから、最終目標はまなぶが 家族みたいになついてくれる事な☆」 高い目標を設定されたが、うなづきつつサンドイッチをほおばる。 「ズバリ、お父さんを見習うワケだね?」 「ん〜そうだな!まなぶ、家族の中では豊太郎によくくっついてるし… 最終目標は豊太郎って事で!」 「よし…って、ねぇ、さっきから気になってたんだけど… ゆうってお父さんの事呼び捨てにしてたっけ?」 「ん?ああ…本人の前とか気をつけてる時は ちゃんと『父さん』って呼んでるけど、気が抜けるとすぐ 『豊太郎』って呼んじゃうんだよなー。 だってさ、最初はずーっと『豊太郎』って呼んでたんだぜ? 結婚したからって『父さん』って何だか変な感じする。」 またサンドイッチに手を伸ばして食べるゆう。 俺も次のサンドイッチをいただこうとしたがある違和感に阻まれた。 さっきのゆうの言葉…ん?あれ? ―だってさ、最初はずーっと『豊太郎』って呼んでたんだぜ? 結婚したからって『父さん』って何だか変な感じする。 (えーっと…これって…) 考えているとゆうが不思議そうに俺を見た。 「ん?どしたの兄ちゃん?固まっちゃって。」 「ゆう…お父さんってもしかしてさ…」 この後どう続けようかと迷っていると 俺の言いたい事を察したのかゆうがきょとんとした顔で言った。 「あーれ?言ってなかった?豊太郎は、母さんの“さいこん”相手!」 「あ…」 「幼稚園ぐらいの時に初めてうちに来てー…えっと 前の父さんは最初っからいなかった。」 こっちは地雷を踏んでしまったとドキドキしているが ゆうはいたって平然と話す。 「まなぶってすごい人見知りだったのに、 豊太郎には初めからすごい懐いてたの覚えてる。 オレも豊太郎、好きだったし!だから結婚したんだよ。二人とも。」 「そう…だったんだ…。」 急に新事実を知ってしまって一瞬押し黙ってしまったが すぐにゆうがはしゃいだ声を出す。 「ね、兄ちゃん!今度はアレやろ!!アレ!!」 ゆうが指差しているのは巨大で傾斜のキツイ滑り台。 人口芝が植えられているそれを人々はソリなどで滑っている。 人々の悲鳴のようなものも聞こえるし…とてもスリルがありそうだ。 っていうか食べてすぐアレはヤバくないか…?? 「みんなすげー楽しそう!!行こう?ね、早く!!」 ゆうがまた走り出して俺はまた追いかける。 さっきのゴーカートのスタイルでソリに乗って滑ったが とにかくスリルがあった。俺でも声を上げてしまうくらい。 ゆうもキャーキャーと悲鳴を上げて、 それでも「もう一回」と俺をまた滑り台の出発地点へ連れて行くのだった。 それがデジャヴのように何度も繰り返され… 「ゆう、こ…今度こそ絶っっ対、最後な? 分かったか?約束だからな?」 「う〜…うん…分かった。」 何回滑っても飽きる様子が無いゆうに必死に 言い聞かせて、最後の滑りにやってきた。 俺は正直、やつれてる。体力の限界だ。 それでも可愛い弟の為に最後の一滑りを!! ソリに乗って滑り出し、最後の爽快感を味わう。 すごい速さで風を切って落ちる感じを楽しんで 声を上げて、そろそろ滑り終わると思った時… 「!!」 体がぐらついた。 急にソリがバランスを崩し、横転したのだ。 俺はとっさにゆうを抱き寄せて庇ったが二人でソリから投げ出されて 芝生の上に転がってしまった。 「ゆう!!大丈夫か!?」 俺の腕の中で倒れているゆうがハァハァと息を切らせる。 抱き寄せてはいたが、ほとんど横並びに投げ出されたので 庇いきれたわけじゃない。もし体のどこか打ちつけていたら… 心配で覗き込んだゆうの顔は…笑っていた。 「楽しい…オレ…今すっげー楽しい…」 「え……?」 聞き取れるか聞き取れないかで呟かれた予想外の言葉。 「もっともっと…本当の兄弟みたいに毎日、 兄ちゃんと一緒に遊びたい…まなぶもいればもっと最高…」 今度はしっかり俺の顔を見て、息を切らせながら、目を細めて笑っている。 「ゆう……」 とりあえず小さな体を抱き起して、俺はゆうに笑いかけた。 「遊びたい時はいつでも遊んであげるよ。まなぶも一緒に。 俺はゆうとまなぶの兄ちゃんだから…早くまなぶと仲良くならないとな。」 俺の優しい笑顔とこの一言で… 「兄ちゃん…大好き!!」 息も絶え絶えだったゆうがいきなり抱きついてきて、俺は ソリの転倒時より激しく体を打ちつけるハメになってしまった。 そんな楽しい一日の帰り道、ゆうがこんな事を言ってきた。 「あのさ、兄ちゃん、まなぶと二人きりで会える日… オレがクラブでいない日、教えてあげる。 オレがいる日に二人で会われたら 仲間はずれにさえれたみたいでヤだけど… その日なら思う存分まなぶと仲良くなれるよ!」 「え?でも、まなぶ君が嫌がるよ…?」 「家ならたいてい豊太郎がいるし、きっと力になってくれるって!」 な?と、ゆうが得意の明るい笑顔で笑う。 この笑顔に根拠の無い自信がちょっと湧いたりするもので… うん、今度行ってみようかなと思う単純な俺だったりする…。 ******************* 気に入ったら押してやってください 【作品番号】ME15 |
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