2デイ〜神社の双子〜 神社。それは神を祭った神聖なる場所。 俺の家の近くにも神社がある。 しかし、行事ごと以外の日はめったに人がいない。 子供の頃はよく『肝試し』などでお世話になったが、 今ではどこか入りづらい雰囲気の場所だ。 そんな近所の神社に、久しぶりに入ってみた。 「うわ…懐かしいな…」 変わらない風景に、昔を思い出す。 そう言えば…コマイヌの口に入ってるお金を「もらおうぜ!」 などと言って友達と笑っていたっけ…今考えれば罰当たりだったな… そんな事を考えながら、コマイヌの口のお金をじっと見てしまう俺。 「…あのぉ…」 一人で思い出に浸っていたら、後ろから声がした。 振り返ると巫女装束のようなものを着た小さな子供が立っている。 ホウキまで持って…この神社の子だろうか? 「失礼ですが、そんなところで何してるんですか…?」 その子は怪訝な顔つきで俺を見ていた。 もしかして…不審者と思われてる…? そ、そう言えば…俺、コマイヌじっと見てたし… 傍から見れば賽銭泥棒と勘違いされてたりして… 俺は慌てて弁解しようとした。 「い、いや…俺は決してコマイヌのお金を取ろうとしてた わけではなく…」 「…!!」 小さな巫女さんの驚いた顔で、俺は自分の失言に気づく。 (しまった!!ヤブヘビだ!!これじゃあまるで取ろうとしてた みたいじゃないか!!) オロオロする俺がいっそう怪しく見えたらしく、その子は険しい表情になる。 「やっぱり、賽銭泥棒!!」 「いや…その…」 「問答無用!!覚悟!!」 いきなり小さな巫女さんがホウキを振り上げる。 殴られる!?と思った俺はとっさに逃げた。 しかし、巫女さんはすぐに体勢を立て直して追ってくる。 「待て!!逃がさないぞ賽銭泥棒!!」 「だから俺は賽銭泥棒じゃ…わっ!!」 ホウキで足をすくわれてその場に転んでしまった。 間髪いれずに巫女さんがまた俺を殴ろうとしてくる。 あまりの素早さに今度は逃げる事もできない。 もうダメだ…俺は思わず目をつぶった。 しかし… 「かぐや!!」 突然の声に恐る恐る目をあけると、また一人 巫女装束っぽいものを着た子供が駆け寄ってくるのが見えた。 「兄上!!賽銭泥棒が!!」 俺を襲ってきた巫女さんが叫んでいる。 ヤバイ!!兄弟か!? これ以上誤解されたら、今度は2人がかりでボコられる!! そう思ったので俺も叫んだ。 「違います!!俺は近くを通りかかったのでちょっと立ち寄っただけで、 昔の思い出に浸ってただけです!!」 走ってきた兄の巫女さんは、俺と襲ってきた巫女さんを交互に見比べる。 そして、一つ大きなため息をつくと、俺に手を差し伸べた。 「弟が失礼をいたしました。お怪我はありませんか?」 「い、いえ…大丈夫です。」 兄の巫女さんのしっかりした雰囲気に、俺も思わず敬語になる。 彼は俺を助け起こすと、今度は俺を襲ってきた巫女さんに厳しい表情を向ける。 「かぐや、この人は何も盗ってない。勝手に決め付けたらダメじゃないか。 その上乱暴するなんて…」 「ご、ごめんなさい…兄上…」 「あ、あの、俺も悪いんです!誤解されるような事してたから! だからあの…あんまり怒らないでやって下さい!!」 叱られている巫女さんが可哀想になって、横から庇う俺。 そんな俺を見て兄の巫女さんは笑いだした。 つられて叱られてた巫女さんも笑い出す。 「あははは、そんな必死にならなくても…聞いたか、かぐや? よかったなぁ、優しいお兄さんで。」 「ふふふ…はい。お兄さん、僕は大丈夫ですよ? 兄上に怒られるのは慣れてますから。」 「コラ!慣れるんじゃなくて、少しは怒られないように努めろ!」 「あ…ごめんなさい…」 冗談ぽく怒る兄に、照れながら謝る弟…。 こうやって2人並んだ姿を見てみると、何だか背丈も顔立ちもよく似ている。 この2人…もしかして… 「キミ達…双子…?」 俺のこの言葉に、2人は顔を合わせてにっこりと微笑む。 「はい。私は兄の『やと』と申します。そしてこの子が…」 「弟の『かぐや』です。」 『やと』君に『かぐや』君…やっぱり双子だったんだ…。 密かに感心する俺に、やと君が声をかけた。 「せっかくですから、お参りしていかれます?」 「え?ええと…そうします…。」 何故か敬語になってしまう俺。 「あと、おみくじに、お守りも買っていかれます?」 「え?ええと…そうします…ええ!!?」 ついノリで「そうします」と言ってしまった。 質問の意味に気づいた時には手遅れで 慌てて声の方を見ると、かぐや君がクスクスと笑っている。 かぐや君…なかなか商売上手? 今更「さっきのは口が滑って」なんて言えない… 「…いくらですか…?」 観念して財布を出した俺に、かぐや君は驚いた顔をした。 「そ、そんな…冗談なのに!!」 「あはは、大丈夫。そんな高いものじゃないでしょ?」 「でも…でもぉ…」 かぐや君がやと君をちらちら見ている。 また叱られると思ったのだろうか。 そんな弟を見て、やと君は困ったように笑っていた。 「全くお前は…でも、いいんじゃないか? お兄さんが買ってくれるっていうんだし、ご好意に甘えよう。 かぐや、お兄さんにお守りを選んであげてくれ。」 「は、はい!!」 明るい笑顔で答えるかぐや君。 やと君は俺に向き直ると、深く頭を下げた。 「私はまだ仕事がありますのでお先に失礼します。 またいつでもお参りにいらしてください。」 「いえ…そんな…こちらこそどうも…」 俺も慌てて頭を下げる。 やと君はふわりと微笑んで去っていった。 なんつーか…子供とは思えない… そして、俺はかぐや君とお守りを選ぶことになった。 「えーっと、全部500円なんですけど種類がたくさんあって… こっちは家内安全…こっちは交通安全…安産?は、関係ないですよねー…。」 ガラスケースを指差して色々説明してくれるかぐや君。 一生懸命な姿がなんとも健気だった。 ふと、彼が思いついたように顔を上げる。 「恋愛成就、なんてどうですか!? お兄さんみたいに若い方ならピッタリです!!」 「え!?」 『恋愛成就』。長らく無縁の言葉に俺は戸惑ったが、 かぐや君は急に張り切って、まくし立てる様に言った。 「好きな人、いるんでしょう!? 告白の瞬間…ポケットに入れたこのお守りをぎゅっと握り締めて… もちろん、彼女は微笑んで受け入れてくれるんです!! きゃ―――っ!!素敵です!!お守りが叶える恋!! ね?これにしません!?」 完全にロマンチスト状態のかぐや君は ほとんど有無を言わせない口調だ。 しかし、悲しいけど俺は『恋愛成就』なんて要らない… 恐る恐る断ってみる。 「あ、の…俺はこっちの『家内安全』の方にしようかなと…」 「え…」 かぐや君が予想以上に悲しそうな顔をしたので驚いた。 「そう…ですか…『恋愛成就』…いいと思ったんですが…」 「あ、その…」 「お兄さんに…幸せになってほしかったんですけど…」 「あっ…と…」 「よく考えたら無理やり僕の希望を押し付けてたんですね…」 今にも泣き出さんばかりに瞳を潤ませるかぐや君。 ダメだ…俺はもう耐えられない。 「か…買います!!『恋愛成就』買います!! ついでに『家内安全』も下さい!!」 とっさにそう叫んでしまった。 その瞬間、かぐや君の笑顔が弾けた。 「わぁ!!やっぱり好きな人いるんですね!! はい、『恋愛成就』と『家内安全』です!! 全部で千円になります!! うちのお守り、ご利益は抜群なんですよ!頑張ってください!!」 好きな人もいない俺が『恋愛成就』のお守り… ほとんど、かぐや君のために買ったようなものになってしまった。 これが何か役に立つのだろうか? キラキラした笑顔のかぐや君に見送られ、 神社を後にした俺であった。 ******************* 気に入ったら押してやってください 【作品番号】ME2 |
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